【公開日:2021年5月24日】

退院サポートは、ロイヤルカナンの高カロリーの療法食です。
結論から書くと、「腎不全で使うこともできるけど、もっと最適なものが他にある」です。
この点について、ペット栄養管理士の筆者が解説していきます。
この記事でわかること
退院サポートとは
退院サポートは、ロイヤルカナンの缶詰療法食です。
犬猫での区別はなく、犬猫兼用です。場合によってはフェレットやハムスターなどのエキゾチックアニマルに使うこともあります。
栄養バランスとしては以下のようになっており、いわゆる「高栄養」の缶詰です。
- 高カロリー
- 高タンパク
- 高脂肪
よって、以下のような状態のペットに使われることが多いです。
- 手術後
- 食欲不振
- 栄養不良
- 成長期・離乳食
また、中身がトロトロの状態になっているため、強制給餌をする時にも使えます。
※強制給餌とは
自力で食べられな時に、注射器(シリンジ)やカテーテルを使って、体内に食べ物を流し込んであげること。
イメージ写真
※もちろん「ふつうの缶詰」として、お皿に入れて与えることもできます。中身のイメージは動画でも解説中。
腎不全のときには、「何も食べずに痩せていく」ことがいちばん良くありません。
病気と闘うためのエネルギーが減っていき、QOL(生活の質)が一気に低下していくからです。
そういった意味で、「退院サポートを腎不全のペットに使う」ことがあります。
腎不全が進行して食欲が落ちた場合や、痩せてきた場合には有効な選択肢になるでしょう。
ですが、「退院サポートが腎不全の時に最適か?」といわれると、答えは「NO」です。
退院サポートは、腎不全のペットに最適ではない
なぜなら退院サポートは、腎不全のペットにとって「リン」「タンパク質」が多すぎるからです。
ペットに腎不全がある場合・・・
- リン
→ 腎不全の進行をはやめ、寿命を短くする可能性 - タンパク質
→ 体調が悪化する原因であるBUNをあげてしまう
腎不全の時には、「リン」と「タンパク質」が低減されたフードを与えることが大切です。
なので、「そのようなフードを試してみて、食べなかった時にのみ退院サポートを与える」という考えがベストです。
参考までに、「腎不全のペットに推奨される栄養バランス」と「退院サポートの栄養バランス」をまとめておきます。
【犬の場合】
腎不全の推奨 | 退院サポート | |
リン | 0.2~0.5 % | 約 1.1 % |
タンパク質 | 14~20 % | 約 47 % |
【猫の場合】
腎不全の推奨 | 退院サポート | |
リン | 0.3~0.6 % | 約 1.1 % |
タンパク質 | 28~35 % | 約 47 % |
※上記数値は乾物量分析値
※退院サポートは公表値から水分量を除いて算出

ということで、腎不全のペットに使えるフードを5つ紹介していきます。(退院サポートと同じウェットタイプを紹介)
犬と猫を同時に記載していきます。
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腎不全のペットにおすすめの缶詰フード
k/d シチュー
k/dシチューは、ヒルズから発売されている療法食の缶詰です。
肉や野菜などがゴロゴロとかたまりになり、とろみがついたグルメ缶であることが最大の特徴です。
中身のイメージ
それでいて、リンやタンパク質などの栄養バランスは、腎不全のペット対応になっています。
【犬k/dシチュー】
腎不全の推奨 | k/dシチュー | |
リン | 0.2~0.5 % | 0.3 % |
タンパク質 | 14~20 % | 16 % |
【猫k/dシチュー】
腎不全の推奨 | k/dシチュー | |
リン | 0.3~0.6 % | 0.5% |
タンパク質 | 28~35 % | 30 % |
※上記数値は乾物量分析値
退院サポートのような、流動食としては使えません。
ですが、味も犬猫2種類ずつから選べ、食欲が落ちている状態でのおいしさピカイチです。
利用者も多く、かなり使いやすい腎不全用の缶詰と言えます。
犬k/dシチュー(ビーフ味・チキン味) ↓↓
メーカー欠品中
猫k/dシチュー(チキン味・ツナ味) ↓↓
CKW / FKW
犬用のCKW、猫用のFKWは、スペシフィックから発売されている腎不全用の療法食です。
シチュー缶のようにグルメタイプではなく、味のバリエーションもありません。
ですがやわらかいソフトタイプで、食べてくれることは多いフードです。
中身イメージ
栄養バランスも、十分に腎不全の対応になっています。
【犬CKW】
腎不全の推奨 | CKW | |
リン | 0.2~0.5 % | 0.3 % |
タンパク質 | 14~20 % | 16 % |
【猫FKW】
腎不全の推奨 | FKW | |
リン | 0.3~0.6 % | 0.5% |
タンパク質 | 28~35 % | 34 % |
※上記数値は乾物量分析値
また100gサイズで使い切りやすく、アルミトレイのため廃棄もしやすいです。(犬用CKWは300gもあり)
犬用CKW ↓↓
猫用FKW ↓↓
腎臓ケア
腎臓ケアは、アニモンダの腎不全用療法食です。
アニモンダは日本の動物病院で扱いが少ないため、ピンとこない方もいるかもしれませんが、1991年にドイツで製造が開始された歴史あるブランドです。
中身イメージ
特徴は、以下の2つです。
- 味のバリエーションが豊富(犬で4種類、猫で6種類)
- グレインフリー
メモ
グレインフリーは、すべてペットにも必ず必要なわけではありません。
米などの穀物にアレルギーがあるペットに必要です。
ただ、腎不全への栄養バランスがわずかにオーバーする項目があるため、「まだ悪くなっていない状態」で使うほうがよいでしょう。
たとえば「初期段階の腎不全」「いまは腎臓の数値に問題ないが、ケアはしたい」などのケースです。
【犬・腎臓ケア】
腎不全の推奨 | 腎臓ケア | |
リン | 0.2~0.5 % | 0.6 % |
タンパク質 | 14~20 % | 24 % |
【猫・腎臓ケア】
腎不全の推奨 | FKW | |
リン | 0.3~0.6 % | 0.7% |
タンパク質 | 28~35 % | 34 % |
※上記数値は乾物量分析値
犬用・腎臓ケア ↓↓
猫用・腎臓ケア ↓↓
腎臓サポート・リキッド
腎臓サポート・リキッドは、ロイヤルカナンの腎不全用療法食です。
完全な液体状なので、強制給餌をする時に最適です。また「飲み水に混ぜて栄養補給」という使い方も可能です。
製品には、専用のキャップが付属しています。このキャップを使うと、シリンジ(注射器)から直接吸い込むことができるため、衛生面でも安心です。
「やや高価であること」「2日以内に使いきり」などの点はネックになるかもしれませんが、日本で完全な液体の腎不全食はこれだけです。(2021年5月現在)
ただ栄養バランスはややオーバー気味なので、あくまで「強制給餌が必要なときの最終兵器」として考えて使うのがおススメです。
【犬用・腎臓サポートリキッド】
腎不全の推奨 | 腎臓サポート リキッド |
|
リン | 0.2~0.5 % | 0.5 % |
タンパク質 | 14~20 % | 約 24 % |
【猫用・腎臓サポートリキッド】
腎不全の推奨 | 腎臓サポート リキッド |
|
リン | 0.3~0.6 % | 0.7 % |
タンパク質 | 28~35 % | 47 % |
※上記数値は乾物量分析値
※リキッドは公表値から水分量を除いて算出
犬用・腎臓サポートリキッド ↓↓
猫用・腎臓サポートリキッド ↓↓
キドナ
キドナは、森乳サンワールドの腎不全用療法食です。(犬用・猫用あり)
粉末状になっており、お湯や水に溶いて固さを調整する流動食です。
粉末のため、腎臓サポートリキッドよりコストを抑えられるのがメリットです。
まぜる水の量と固さの関係のめやすは以下の通りです。(表の3段目。粉末と水の比率で表されています)
【犬用キドナ】
腎不全の推奨 | 犬用キドナ | |
リン | 0.2~0.5 % | 約 0.2 % |
タンパク質 | 14~20 % | 約 23 % |
【猫用キドナ】
腎不全の推奨 | 猫用キドナ | |
リン | 0.3~0.6 % | 約 0.4 % |
タンパク質 | 28~35 % | 約 33 % |
※上記数値は乾物量分析値
※キドナは公表値から水分量を除いて算出
1包20gで使い切りやすく、期限も長いため、流動食が初めての方にとっては使い勝手がかなりいい流動食です。
犬用・キドナ ↓↓
猫用・キドナ ↓↓
「退院サポートは腎不全のペットに使える?」の記事は、以上となります。最後までお読みいただき、ありがとうございました!