「低分子プロテイン」と「セレクトプロテイン」っていう2つのアレルギーフードをすすめられたんだ。
うちの犬にはどっちがあうのかな?
低分子プロテインとセレクトプロテインは、どちらもロイヤルカナンの食物アレルギーケアの療法食です。
名前は似ていますが、アレルギーケアのしくみなどは、おおきく違います。
その違いについて、ペット栄養管理士の筆者が違いを解説していきます。
この記事でわかること
低分子プロテインとセレクトプロテインの違い
以下の3つの項目から、両社の違いを比較していきたいと思います。
- 使っている原材料の違い
- 粒の違い
- 価格の違い
使っている原材料の違い
読者さんがいちばん気になるのは「何のアレルギーをケアしているか」かとおもいます。
ということで、つかわれている主なタンパク原料(=ケアできないアレルギー)をまとめました。
ポイント
食材の中の「タンパク質」が、アレルギー反応を引き起こすと考えられています。
よってフードの中に「なんのタンパク質が入っているか」を知ることが大切です。
【犬用】
製品名 | 使っているタンパク源 |
低分子プロテイン | 米 |
セレクトプロテイン ダック&タピオカ |
ダック(アヒル)、タピオカ |
セレクトプロテイン チキン&ライス |
チキン、米 |
セレクトプロテイン カンガルー&オーツ※ |
カンガルー、オーツ麦 |
セレクトプロテイン フィッシュ&ポテト |
魚(具体的な種類については非公開)、ポテト |
※2020年ごろに販売終了しました。
【猫用】
製品名 | 使っている主原料 |
低分子プロテイン |
米 |
セレクトプロテイン ダック&ライス |
ダック(アヒル)、米 |
セレクトプロテイン チキン&ライス |
チキン、米 |
ペットが「何の食材に対するアレルギーなのか」を推測できている方は、それが入っていないものを選ぶとよいでしょう。
粒の違い
次にそれぞれの商品の粒の形をまとめてみました。
※実物サイズではありません。あくまで「形」の確認にご利用ください。
【犬用】
製品名 | 粒の形 |
低分子プロテイン | |
セレクトプロテイン ダック&タピオカ |
|
セレクトプロテイン チキン&ライス |
缶詰のみ |
セレクトプロテイン カンガルー&オーツ |
|
セレクトプロテイン フィッシュ&ポテト |
【猫用】
製品名 | 粒の形 |
低分子プロテイン |
|
セレクトプロテイン ダック&ライス |
|
セレクトプロテイン チキン&ライス |
パウチのみ |
「食べるか食べないか」は、粒の形にも影響を与えます。
初めて与える方は、今与えているフードの形と近いものを選ぶと安心です。
価格の違い・買える場所の違い
ロイヤルカナンの療法食は、動物病院で購入できます。
またそれ以外にネットで購入することもできますが、ネット購入にも2つの種類があります。
①Amazonや楽天市場など、一般的な通販サイトで買えるもの
②メーカー公式サイトで買えるもの(病院コードの入力が必要)
価格は②のグループのほうが高くなります。(商品によりますが、1.5倍くらい高くなる)
そこで、低分子プロテインとセレクトプロテインについて、以下の点を調べてみました。
- ①と②どちらのグループなのか
- 価格はいくらになっているのか
【犬用】
製品名 | グループ | 価格 |
低分子プロテイン | ① | 4,873円 (3㎏) |
セレクトプロテイン ダック&タピオカ |
① | 4,935円 (3㎏) |
セレクトプロテイン チキン&ライス |
① | 4,221円 (200g×12缶) |
セレクトプロテイン フィッシュ&ポテト |
② | 6,712円 (3㎏) |
※①の価格は、記事公開時のアマゾンまたは楽天市場の最安値。常に変動します。
【猫用】
製品名 | グループ | 価格 |
低分子プロテイン |
① | 3,664円 (2kg) |
セレクトプロテイン ダック&ライス |
① | 4,028円 (2kg) |
セレクトプロテイン チキン&ライス |
① | 4,050円 (85g×24袋) |
低分子プロテインとセレクトプロテインの違いはよく分かったわ。
でもなんでそのような違いがあるの?
「結論だけ分かればオッケー」という方には、上記の説明で十分かとおもいます。
ただ「その理由や仕組みまで知っておきたい」という方のために、補足をしていきたいと思います。
食物アレルギーとは?
食物アレルギーは、食品中の「タンパク質」に免疫が反応するものといわれています。
通常であればそのような反応はしませんが、食物アレルギーをもっている場合には反応が起こってしまいます。
このを回避するため、療法食では2つの工夫(技術)が使われることが多いです。
- 加水分解タンパク質を使う
- 新奇タンパク質を使う
その考え方に基づくと、以下のようになっています。
- 低分子プロテインは、加水分解タンパク質
- セレクトプロテインは、新奇タンパク質
低分子プロテインでの配慮
加水分解タンパク質は、文字通り「タンパク質」をこまかく分解したものになります。
上で「タンパク質に反応するのがアレルギー」と書きましたが、正確には一定サイズ以上のタンパク質がアレルギーを引き起こすとされています。
逆に言うと「タンパク質が小さく分解された状態なら、アレルギーリスクに配慮できる」ということです。
この加水分解タンパク質を利用したのが、低分子プロテインです。
原材料を見ると、「大豆」「鶏と七面鳥のレバー」を加水分解していることが分かります。
犬用・低分子プロテインの原材料
米、加水分解大豆タンパク(消化率90%以上)、動物性油脂、加水分解レバー(鶏、七面鳥)、ビートパルプ、大豆油、魚油(ω3系不飽和脂肪酸(EPA/DHA)源)、フラクトオリゴ糖、ルリチシャ油、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、アミノ酸類(DL-メチオニン、L-チロシン、タウリン)、ゼオライト、ミネラル類(Ca、Cl、P、K、Na、Zn、Mg、Mn、Fe、Cu、Se、I)、ビタミン類(コリン、E、ナイアシン、C、パントテン酸カルシウム、ビオチン、B6、B2、B1、A、葉酸、B12、D3)、保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス)
猫用・低分子プロテインの原材料
米、加水分解大豆タンパク(消化率90%以上)、動物性油脂、植物性繊維、ビートパルプ、大豆油、加水分解レバー(鶏、七面鳥)、魚油(ω3系不飽和脂肪酸(EPA/DHA)源)、フラクトオリゴ糖、ルリチシャ油、マリーゴールドエキス( ルテイン源)、アミノ酸類 (DL-メチオニン、タウリン)、ゼオライト、ミネラル類(Cl、K、Ca、Na、P、Zn、Mn、Fe、Mg、Cu、Se、I)、ビタミン類(コリン、E、ナイアシン、C、パントテン酸カルシウム、ビオチン、B6、B2、B1、A、葉酸、B12、D3)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス)
ですが、それぞれに炭水化物源として「米」が使われていることも分かります。(原材料の先頭)
米にもタンパク質が入っており、米タンパク質は加水分解されていません。
よって「低分子プロテインは、米アレルギーには配慮されていない」ということになってしまいます。
米のタンパク質も分解すればいいのに、なんで分解していないの?
ロイヤルカナンからは、アミノペプチドフォーミュラというアレルギー用療法食も販売されています。
犬・アミノペプチドフォーミュラ
猫・アミノペプチドフォーミュラ
アミノペプチドフォーミュラは、フード中のおもなタンパク質がすべて加水分解されています。
つまり米も含め「すべてのアレルギーにも配慮されている」フードです。
そのような違いがある分、価格が低分子プロテインより1.5倍くらい高くなります。
\犬・アミノペプチド /
※猫用アミノぺプチドフォーミュラは②のグループのため、公式サイトからの購入が可能
価格的にアミノペプチドフォーミュラと差別化をするため、「低分子プロテインの米は加水分解されていない」と思われます。
セレクトプロテインの対応
一方セレクトプロテインは、加水分解タンパク質は使っていません。
「アレルゲンになりにくい原材料を、最小限の数だけ使う」というフードです。(アレルゲンになりにくい原材料のことを「新奇タンパク質」とよぶ)
おおざっぱに言えば、アレルギーになりにくい食材なら何を使ってもいいので、いろんなバリエーションがあるのがメリットです。
ただ反面、新奇タンパク質にもアレルギーをもつ子は少なくありません。
低分子プロテインとセレクトプロテインの違い」についての記事は、以上となります。最後までお読みいただき、ありがとうございました!