【2021年2月5日】

ロイヤルカナンのオルファクトリーって、尿石がない元気な猫にあげてもだいじょぶなのかな?
上記のような疑問を持つ方にむけて、ペット栄養管理士の筆者が解説していきます。
ユリナリーS/O オルファクトリーとは
ユリナリーS/O オルファクトリー(以下、オルファクトリー)は、ロイヤルカナンの猫用療法食です。
カロリーの高さにより、「オルファクトリー」と「オルファクトリー ライト」があります。(オルファクトリーが386kcal/100g、オルファクトリーライトが346kcal/100g)
オルファクトリーは、日本語にすると「olfactory=嗅覚」という意味になります。
つまり、猫の嗅覚を刺激するようなフードであるということです。
猫は、おいしいと感じる要素に「香り(嗅覚)」が深く関わっていることが分かっています。
療法食をよりおいしく食べてもらうために、このオルファクトリーのシリーズが作られています。(オルファクトリーは10年くらいの歴史があります)
パッケージ裏面の記載
中身としては、以下のミネラル成分を少なくしています。
ストルバイト尿石とシュウ酸カルシウム尿石の治療に使うためです。(以下の成分は尿石のもとになってしまう)
- リン
- マグネシウム
- カルシウム
また尿石に対応するため、尿のpHが酸性になるようにしています。
(参考:ロイヤルカナンHPより)
【ストルバイト】ストルバイトが形成されにくい弱酸性の尿となるように、ミネラルなどの栄養バランスを調整
【RSS】尿中のストルバイトやシュウ酸カルシウムの飽和度が高くない健康的な尿量を維持するように、ミネラルなどの栄養バランスを調整。
このようにオルファクトリーの成分は、一般食とは大きな違いがあるフードと言えます。

ユリナリーS/O オルファクトリーを、健康な猫にあげると危険?
オルファクトリーは尿石用のフードなので、尿石の治療や予尿石防をする猫にあげることを想定しています。
ただ以下のような理由で「健康な猫にオルファクトリーをあげたい」という方もいるでしょう。
- 尿石は治ったが、猫がオルファクトリーを大好き
- 手間などを考えて、健康な同居猫にもオルファクトリーをあげたい。(多頭飼いの場合)
結論としては、「健康な猫にオルファクトリーをあげても問題ない」です。
なぜなら、オルファクトリーは「1歳以上の猫に与え続けてよい栄養バランス」になっているからです。
AAFCO※が定める「成猫に必要な、栄養バランスの最低量」と、オルファクトリーの栄養成分を比較してみます。
【AAFCOの基準とオルファクトリーの比較】
AAFCOが定める必要最小量 | オルファクトリー | オルファクトリーライト | |
タンパク質 | 6.5 | 8.3 | 9.25 |
脂肪 | 2.25 | 3.9 | 3.18 |
カルシウム | 0.15 | 0.25 | 0.25 |
カリウム | 0.15 | 0.18 | 0.32 |
リン | 0.13 | 0.23 | 0.26 |
マグネシウム | 0.01 | 0.02 | 0.02 |
鉄 | 2.0 | 3.35 | 2.78 |
銅 | 0.13 | 0.39 | 0.43 |
亜鉛 | 1.88 | 4.75 | 5.2 |
ナトリウム | 0.05 | 0.34 | 0.35 |
タウリン | 0.03 | 0.06 | 0.08 |
アルギニン | 0.26 | 0.47 | 0.49 |
ビタミンE | 1.0 | 15.55 | 17.35 |
※100kcalあたりの栄養素量
※AAFCO:ペットフードの栄養基準を定める団体
オルファクトリーもオルファクトリーライトも、すべての栄養素において、成猫に必要な最低量を満たしていることが分かります。
よって、健康な猫が食べても栄養不足になることはありません。(成猫とは、一般的に1歳以上の猫を指します)
なお栄養量の「上限」は、AAFCOでは定められていません。
オルファクトリー ↓↓
オルファクトリー ライト ↓↓
ユリナリーS/O オルファクトリーをあげないほうがいいケース
ただし健康であっても、以下の3つのケースでは、オルファクトリーは与えないことをおすすめします。
- 1歳未満の猫
- 妊娠・授乳中の猫
- 高齢の猫
1と2については、病院向けカタログでも使うべきでないことが明記されています。
理由は、マグネシウムが不足するからです。
3については、直接的にカタログの明記はありません。
ただオルファクトリーは尿のpHを酸性にする作用があります。また尿石をできにくくするため、ナトリウムも高めに配合しています。
それらは、腎臓や心臓に負担をかける可能性があります。
高齢の猫は「健康そうでも、心臓や腎臓の機能が低下している」ことがあるので、オルファクトリーは使わないほうが無難と考えられます。
もし健康な猫に尿石用のフードを使いたいのであれば、他のメーカーでナトリウムが少ないものを選ぶとよいでしょう。
参考までに、オルファクトリーよりナトリウムが少ない療法食をまとめておきます。(ストルバイト尿石もシュウ酸カルシウム尿石も対応できるもの)
ナトリウム | 特徴 | |
オルファクトリー
|
1.2% | ー |
オルファクトリーライト
|
1.2% | ー |
c/d (ヒルズ) ![]() |
0.35% |
|
c/d コンフォート (ヒルズ) ![]() |
0.36% |
|
pHバランス (アニモンダ) ![]() |
0.55% |
|
pHアシスト (スペシフィック) ![]() |
0.42% |
|
※製品重量あたりの%
c/dとc/dコンフォート
は、尿石用の療法食の中でいちばん少ないナトリウムで、若い猫から高齢猫まで幅広く使えます。
販売歴もオルファクトリーより長く、安心して使えます。
c/dとc/dコンフォートの違いは、以下で詳しく解説しています。
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【ヒルズ】c/dとc/dコンフォートの5つの違いをペット栄養士が解説。
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pHバランスは、ドイツ産のグレインフリーの尿石療法食です。
お米のアレルギーなどがある場合には最適で、300gサイズなので、お試しがしやすいです。
pHアシストは、自然派の酸化防止剤を使った療法食です。(c/d、c/dコンフォート、pHバランスも自然派酸化防止剤)
トレーのウェットタイプもあります。
オルファクトリーを健康な猫にあげても大丈夫?の記事は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!