こちらの記事では、犬の膵炎についてペット栄養管理士の筆者が解説していきます。
この記事でわかること
犬の膵炎とは
膵炎とは文字通り「膵臓の炎症」です。
では膵臓とはどのような働きをしている臓器なのでしょうか。
食べ物を食べると消化がされ、吸収されます。
膵臓は食べ物を消化するときの消化酵素をたくさん出している臓器です。
胃や腸などに比べると人間の世界ではマイナーな存在になりがちですが、生きていく上ではめちゃくちゃ大切な臓器です。
犬の膵炎は実はこの消化酵素によって起こります。
「自分自身が放出している消化酵素によって膵臓自身がダメージを受けてしまって炎症を起こす」
これが膵炎の犬でおこっている状態です。
ポイント
膵炎にも「急性膵炎」と「慢性膵炎」があります。
急性膵炎は突然強い症状が出るのに対し、
慢性膵炎は徐々に進行し検査で初めて分かるということもあります。
犬の膵炎の症状
軽度の場合
まずは食欲不振や元気がないといった症状がみられることが多いです。
またときどき吐くことにより気づくこともあります。
重症の場合
激しい嘔吐や下痢が起こります。血が混じっていることもあります。
たいていの場合はそこで病院に連れて行って治療がされると思いますが、ケアが足りないとほかの臓器不全も引き起こし、命にかかわることもあります。
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犬の膵炎の診断
病院で「膵特異的リパーゼ」という項目を測定します。
この数値が高いと(400㎍/L)、膵炎である可能性が高いと診断されます。
ポイント
ちなみに人間が膵炎になるとあまりの痛みで救急車を呼ぶレベルですが、犬の場合はそこまで痛みを表しません。
ときどき吐くなどの症状があって心配な場合は膵特異的リパーゼの測定をお願いしてもいいでしょう。
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犬の膵炎の原因
犬の膵炎ですが、原因は1つではなく複数考えられています。
脂肪の多い食事
脂肪分の多いものを長期的に食べると膵炎になりやすいといわれます。
具体的には乾物量分析値※で脂肪分20%以上のものが危険です。
フードであれば総合栄養食※を与えていれば問題はないですが、危ないのはおやつです。
ペット用のチーズなどは特に脂肪分が高いですので、与えすぎには注意です。
異食
異食と書くと分かりづらいですが、「食べ物じゃないものを食べる」ということです。
ボールや腐った食べ物など、本来食べるべきものではないものを食べると膵炎のリスクが上がります。
肥満・高脂血症
太った犬は膵炎になりやすいといわれます。
また高脂血症といって血液ドロドロの状態も膵炎のリスクになります。
ちなみに太っている犬は高脂血症になりやすいので、体型維持は膵炎の管理にとっては基本だということが分かります。
肥満についてはこちらの記事で解説しています。
犬種
トイプードルやコッカ―スパニエル、ミニチュアシュナウザーは膵炎になりやすい犬種といわれています。
どの犬種も上で書いた高脂血症が多い犬種でもあります。
薬
これらの薬を使うと必ず膵炎になるというものではありませんが、膵炎のリスクをあげるといわれるものがあります。
臭化カリウム(てんかんの薬)
アザチオプリン(免疫抑制剤。再生不良性貧血などいくつかの場面で使われる)
フロセミド(利尿剤。心不全などで使われる)
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膵炎の治療
犬が膵炎になった時は以下の治療を行うことが多いです。
薬
症状がひどい時には入院させ、点滴や痛み止めなどで急性の症状を抑えます。
その後は、吐き気止めを使いつつ食事療法で維持をしていく流れが多いです。
ポイント
膵炎によって膵臓から消化酵素が出にくくなってしまった場合は、人工的な消化酵素を食事に混ぜていくことが必要になるかもしれません。
食事療法
高脂肪のものが膵炎の原因の一つですし、肥満もリスクです。
よって低脂肪のフードを与えていくことが多いです。
実際には乾物量分析値で脂肪分10%以下のものが膵炎の時には好ましいといわれています。
いかがだったでしょうか。
あまりなじみのない病気ですが、発症すると大変危険な病気です。
ただの嘔吐と思わずに、気になったらすぐに病院に連れていきましょう。