ドッグフードや犬用のおやつでは鹿肉でできた製品がたくさんあります。
それに伴いなぜだか「鶏肉や豚肉より鹿肉のほうがいい」みたいな風潮ってありますよね。
というわけで、ペット栄養管理士の筆者が比較・調査してみました。
鹿肉フードとは
文字通り「鹿の肉を利用したドッグフード」のことです。
英語では鹿肉をvenison(ベニソン)と言いますので、パッケージに「鹿肉」ではなく「ベニソン」と表記されていることもあります。
鹿肉フードは「高たんぱく・低脂肪」であるという触れ込みで販売されていることが多いです。
実際にどうなのか、他の6種類のお肉と比較してみました。
✅肉類の栄養バランス比較
たんぱく質 | 脂質 | エネルギー | |
g | g | kcal | |
イノシシ肉 | 18.8 | 19.8 | 268 |
牛肉(ヒレ肉) | 19.1 | 15 | 223 |
豚肉(もも肉) | 21.5 | 6 | 148 |
鶏ムネ肉 | 19.5 | 17.2 | 244 |
鶏モモ肉 | 17.3 | 19.1 | 253 |
鹿肉 | 23.9 | 4 | 140 |
ラム肉 | 28.6 | 20.3 | 312 |
※可食部100gあたりの重量
こうしてタンパク質と脂肪を見てみると、確かに7種類のお肉の中で鹿肉は高たんぱく・低脂肪であるといえそうです。
ただ豚肉(もも肉)とかなり近い栄養バランスでもあるので、「鹿肉が特別な存在か?」といわれるとそうとも言えません。
高タンパクというだけでいえば、ラム肉のほうが高タンパクになりますし・・・
鹿肉フードの栄養バランスを比較してみた
次に鹿肉を使った実際の商品を「栄養バランスが取れているか」という点で見ています。
比較する指標として「総合栄養食の栄養バランス」を使っていきます。
総合栄養食とは?
「主食として使えることが科学的に証明された栄養バランス」を満たしたものを総合栄養食といいます。
AAFCOという団体が基準を決めており、世界的に採用されているものです。
そのAAFCOの基準を満たしているのが総合栄養食です。
詳しくはこちら ↓↓
AAFCOの基準では以下の栄養素の必要量が定められています。
✅総合栄養食として基準が定められている栄養素
- タンパク質
- アミノ酸
- 脂質
- ビタミン
- ミネラル
ちなみ少しマニアックな話になりますが、総合栄養食の栄養バランスは「乾物量分析値」という測定方法で定められています。
乾物量分析値とは、「フード中の水分を除いたうえで」各栄養の割合をあらわすという方法です。
✅あわせて読みたい。
鹿肉麹熟成
単に鹿肉を配合しているわけではなく、鹿肉を麹で発酵、熟成させてから配合している国産フードです。
発酵熟成させることで嗜好性が上がり、消化もしやすくなるそうです。
また加工も低温で行うことで、栄養素の変質などを防ぐと言うこだわりようです。
コストは体重5㎏の犬で、1日370円くらいです。
ビバ・ラ・ベニソン
ニュージーランド産で、鹿肉の粉末を使用しています。
穀物不使用のため、米や小麦に対する食物アレルギーがある際にも使えます。
コストは体重5㎏の犬で、1日300円前後です。
ジウィピーク・ベニソン
フードの中の90%以上が鹿肉でできています。
よってかなりの高タンパク・高脂肪です。(下に表があります)
ニュージーランド産です。
コストは体重5kgの犬で、1日1,000円くらいです。
これら3つの鹿肉フードの栄養バランスは「保証分析値」という測定方法で記載されています。
総合栄養食の測定方法は「乾物量分析値」でしたので、統一するために乾物量分析値にになおしていきます。
【保証分析値】
麹熟成 | ビバ・ラ・ベニソン | ジウィピーク | |
タンパク質 | 26%以上 | 26%以上 | 45%以上 |
脂肪 | 8%以上 | 14%以上 | 23%以上 |
水分 | 10%以下 | 10%以下 | 15%以下 |
↓↓ 変換(水分を除く) ↓↓
【乾物量分析値】
総合栄養食 | 麹熟成 | ビバ・ラ・ベニソン | ジウィピーク | |
タンパク質 | 18% | 約28% | 約29% | 約53% |
脂肪 | 5.5% | 約8% | 約16% | 約27% |
ちなみに総合栄養食は「必要最小量」を示しています。(タンパク質でいえば「タンパク質が最低18%以上入ってないといけない」ということ)
よってタンパク質と脂肪の2つの栄養素を見る限り、3つの商品すべて総合栄養食の基準は満たしているといえます。
ただし、アミノ酸やビタミンの微量な栄養素などについては3つの商品表示がないので、あくまで「タンパク質と脂肪についてのみ満たしている」というのが正確です。
個人的には腎臓などをケアすべき高齢期にはおすすめできません。
腎臓のケアのためにはタンパク質は14~20%が推奨されています。
スポンサーリンク
まとめ
上記のように鹿肉フードといえども栄養バランスにはかなり違いがあります。
また鹿肉フードは特殊なせいか、値段もかなり高価な部類に入るものが多いです。
自分の犬に与えるときは目的を考えて使用するのがいいですね。
個人的には、食事アレルギーがない限り、鹿肉フードじゃなきゃいけない理由はないと思っています。
まずは栄養バランスが証明されている「総合栄養食」を選ぶことのほうが大切だと思います。
ただそのなかで鹿肉フードを使うのであれば「鹿肉麹熟成」か「ビバ・ラ・ベニソン」のどちらかを選ぶかなと思います。