【公開日:2018年11月28日】
筆者は今までたくさんの動物たちを飼ってきましたが、その中でも特に印象に残っているのがビーグル犬のランが皮膚型リンパ腫で亡くなったことです。
とても珍しい病気のため今でも情報が少ないのですが、余命3か月くらいといわれていたところ、1年以上生きることができました。しかも抗がん剤をほぼ使っていません。
今、皮膚型リンパ腫で闘病している犬を飼っている方を応援することになればいいなと思い、その時の経験や治療歴などをつづっていきたいと思います。
この記事でわかること
異変に気付く
※ガンが見つかる直前のラン
わんちゃん、ねこちゃんを飼っている方ならほとんどの方がご経験される場面で私は異変に気づきました。
ランが11歳のときでした。
私がリビングで寝っころがってテレビを見ていた時、ランが私の顔に顔を近づけて舐めようとしてきました。
その時に「ん?なんか口から変なニオイがする」と感じました。
本来体から出てこないだろうニオイを判別できたためすぐに病院に連れて行くことにしました。
「歯周病レベルだといいなー」という少しの期待と「これはよくない病気かもしれない」という恐怖が入り混じりながら、でした。
表現悪いですが、腐った卵みたいなニオイでした。
病院でガンの検査をした
獣医さんもその時点でニオイの異常に気付いていたようで、細胞検査をしてもらうことになりました。
その検査は病院の中ですぐに結果が出るものでなく、外部の検査機関に出して結果を待つというものでした。
結果が出るまでに1週間くらいということで次の来院の際に結果を聞くことになったのですが、その間の1週間というのは何をするにしても上の空でした。
ただ最悪のケースを自分でもどこかで想定していたのだと思うのですが、ガンに関する本を手に入れたり情報収集をしていました。
つらい1週間でしたが、後から思えばその1週間である程度の覚悟ができたのは意味があったことでした。
ちなみにペットに関する本はたくさん読みましたが、その時に出会った本はガンのペットを飼う上での最高の本だと思います。
ガンの子を飼っていない方でも一度は読んでみることをおすすめします。
ガンの犬との接し方や考え方に迷いがなくなります。
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結果は悪性の皮膚型リンパ腫だった
結果はやはりガンでした。
しかも聞いてみると「皮膚型のリンパ腫」正確には「上皮向性T細胞性リンパ腫(別名は菌状息肉腫)」というものでした。
このガンは非常に珍しく(当時発生率は0.1%だか0.01%と言われていました)、しかも悪性度が高いものでその後の寿命が数か月から半年程度と考えられていました。
もちろん絶望的な気持ちでしたが、1週間の準備期間があったからかその場では冷静に先生の話を聞くことができ、その後の治療方針を考えました。
また上記の本にも「ガンになったとしても、ペットは飼い主がいつも通り接してくれないと不安になる」ということが強く書かれていたため、家に帰ってからも普段通りにランとは接していました。
ただ夜ベッドに入り一人になった時には、今までの思い出を振り返ったりして涙が出てきたのを覚えています。
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家族で治療方針を話し合った
ガンにかかった時には場所や種類によっては、手術で除去することも治療の選択肢に入ります。
ただランの場合は口付近に病巣があったこと、年齢的な面で、手術は選択肢に入りませんでした。
私が通っていた動物病院の院長はたまたまですが、腫瘍科認定医※の資格を持っていたため、信頼のおけるいくつかの治療方針を提示いただけました。
腫瘍科認定医とは
日本獣医がん学会が認定している獣医師のこと。ガンに対する専門知識を持っていることを所定のプログラムの修了などを通じて判断される。
提示いただいたのは以下の2つです。
①保存療法(抗がん剤を使わずに、ガンを大きくしない目的の治療)
②抗がん剤治療
どちらで治療するかを1週間ほど家族で話し合いました。
実はもともとランは歯石の除去などで麻酔をかけた際に、翌日足が震えたり食欲が落ちることがありました。
麻酔に対して弱い犬だったので、抗がん剤の投与に不安がありました。
ただ家族みんなで話した結果「私たちでできる最大限の治療をしてあげよう」ということで、抗がん剤治療を選択することになりました。
保存療法とは
先生から提示されたのはインターフェロン(免疫細胞のバランスを整える)、ステロイド、サプリメントなどでした。
どれもガンに対して科学的な効果を保証できるものではありませんが、うまくいく子はうまくいくというものです。
抗がん剤治療とは
ガンの種類によってプロトコール(1週目は〇〇という薬を投与し、2週目は××を投与する、という医学的な手順のこと)が異なります。
ランの場合はオンコビンという薬をメインにした治療を提示されました。
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皮膚型リンパ腫の治療(抗がん剤)
治療方針の決断後、獣医さんに抗がん剤治療のお願いをしに行きました。すぐにはできないものですので、そこからさらに1週間後に初めての抗がん剤を投与しました。
知識では知っていただけの初めての抗がん剤。不安しかなかったです。
投与数時間後・・・
やはりひどい副作用が出ました。ぶるぶると震え明らかに調子が悪そうです。
すぐに病院に連れて行き、「ランにはやっぱり抗がん剤治療は合わない。余計なつらい思いをさせてしまう」という結論になり、保存療法に切り替えていくことになりました。
保存療法については上にも書きましたが、私たちの選択肢になったものはインターフェロンとステロイドです。
これらは効くかどうかも分かりませんので、「神様、お願いだからどれかが効いてください」と祈る気持ちで保存療法を開始しました。
これが効いてくれなければ残り数か月の命です。
皮膚型リンパ腫の治療(保存療法)
祈りが通じたのか、インターフェロンでてきめんな反応が見られました。
リンパ節の腫れはひき、口からのニオイもなくなりました。
この時は本当に本当にうれしかったです。「ランのガンに効くものが見つかった!しかも副作用のないインターフェロンで!」という気持ちでした。
インターフェロン
インターフェロンは注射タイプで副作用はほとんどありません。
アトピーの治療にも使われることがあります。
ただ効果の反応は個体により違うため、必ず効くとはいいきれません。
その後は2週に1回のインターフェロン注射を週末に打ちに行き、それでもリンパ節が腫れるなどの症状が出てきたときにのみ、頓服的にステロイドを使うことが続きました。
ステロイドを使ったのもせいぜい3,4回くらいだったと思います。
また先生とも相談し、ガンのドッグフードも使うことにしました。(ヒルズのn/d。今は販売終了になったようです)
そして予後は数か月くらいしかない可能性があるといわれた中で、「インターフェロン+ガン用フード(犬心)」で結果的にランは約1年ちょっと通常通りの生活を送っていくことができました。
今でも治療方針を複数持っておられた先生への感謝の気持ちでいっぱいです。
治療が効かなくなってきた
インターフェロンとステロイドを中心にした保存療法で、日常通りの生活が我が家に戻ってきました。
2週に1度の通院はありましたがそれ以外は本当に発症前と変わらない生活でした。
ドッグランに行ったり、シャンプーしたり・・・。
ランがガンになっていることを忘れている時間のほうが長かった気がします。それで普段通りに接してあげられたことは、ランにとってもよかったと思います。
ただ保存療法を開始してから約1年が経過した頃、保存療法でも効果がでなくなってきました。
リンパ節の腫れが大きくなり、ビーグルの代名詞である食欲もなくなり、明らかに調子が悪くなりました。
悪くなってから1週間くらいは、会社から帰るとすぐに「ご飯食べた?散歩行けた?」と家族に聞いていました。
日常に戻ってほしいという思いで必死でした。戻らないことはうすうす分かっていたけれど。
旅立ち前夜
この数日後にランは天国に旅立つことになりましたが、その前日が私にとって最高の思い出です。
元気のなかったランが夜に急に玄関まで歩き、外に出たがりだしたのです。
私は「ちょっと外に出るだけだろう」と思い、リードをつけ、サンダル履きで外に出ました。
ただそこから歩く歩く!
どこへ行くでもなく結局1時間くらいの夜の散歩をしました。ランが行きたいほうに私はついていくだけです。
「急にどうしたの?元気になったの?」
「ランすごいね!」
と声を掛けながら歩いていました。
ランを飼い始めた時に私は中学生だったのですが、私たちは通学路をよく散歩していました。
この時ランが通ったコースもこの通学路でしたので、もしかしたら何か思うことがあったのかもしれません。
旅立ち後
旅立ちの時は、両親と私の3人で見送りをしました。
翌日、火葬の日や場所を決め、連絡をしました。
旅立ちの2日後に火葬をすることが決まり、それまでは同じ部屋で隣に布団を敷き2日間は一緒に寝ました。
同級生がやっている花屋にお供え用の花を買いに行ったのですが、なんだかボロボロと涙がこぼれてきてしまい、ランが死んでしまったことを30分くらい話を聞いてもらいました。
また旅立った翌日に獣医さんにも報告をしたのですが、すぐにお花を届けてくれました。
親戚もお線香をあげに来てくれました。
ランのことを知ってくれていた人たちの優しさに触れられた数日間でした。
ペットが本当に家族の一員として認知されているんだと思います。
そして火葬が終わり、ランのお骨と毛を数本もらい、小さなカプセルに入れました。
それは今も私のベッドの枕元に写真とともにおいてあります。
今はそのような便利なものがたくさんあり亡くなった後も一緒にいられるので、いい世の中だとつくづく感じますね。
ランとの12年ちょっとの現実での生活はこのように最期を迎えました。
皮膚型リンパ腫の治療にかかった費用
治療の1年間で100万円弱が病院代としてかかりました。
この時「保険に加入しておけばよかった」と心の底から思いました。
たまたまこの時は治療費を捻出できましたが、お金が全然なくて保険も加入していなかったら精一杯の治療を受けさせてあげられなかったということです。
無駄になってしまうこともある保険ですが、ペット保険は加入したほうが良かったなと思いました。
その時の反省を生かして現在飼っている愛犬は、保険に加入しています。
やっておけばよかったこと
記録をとる
ガンになり始めてからランの体調記録表というものを作りました。
これはこれで役に立ったのですが、元気な時からつけておけばよかったなと思います。何もなければないでいい思い出になりますし、何かあった時に役に立ってくれます。
今は健康記録をつけられるアプリもたくさん出ていますので、それらを使うのがいいと思います。
参考までに「ペット手帳」というアプリのリンクを貼っておきます。
写真を撮る
これは治療に役立つかという意味合いはあまりないのですが、単純に思い出をきちんと残しておくべきだなと思いました。
もともと私は不精なのであまり写真などは撮らなかったのですが、やっぱりふと振り返った時に各年齢で10枚ずつくらいは写真があったらよかったなとお別れしてから思いました。
今はアルバムをお安く手軽に作れるサービスもありますよね。
たくさん愛情を注いでおく
やっぱりお別れしてから最大に後悔したのはこれでした。
「もっとドッグランに連れて行けばよかった」
「もっとなでてあげればよかった」
「あの時感情的に怒らなければよかった」
〇〇しとけばよかった、××しなければよかった、のオンパレードです。
この感情を忘れないためにランのお骨と毛をいただき枕元に常においてあります。
同じ思いをしないよう、これから関わるペットには接していきたいと思います。
「皮膚型リンパ腫ブログ」は以上になります。
正直なところ書きながらも涙が出てきましたし、読んでいただく方はどう思うかな?と感じながら書きました。
ただ当時の大切な感情を思い出せたり頭の中を整理することができ、自分にとってもいい機会になりました。
またペットの持つ力の強さを、あらためて感じさせられました。
6年たった今でも、涙が出るほど鮮明に思い出される記憶というのは、よほど自分にとって大きい存在だったということです。
皮膚型リンパ腫になったペットを飼った方にもそうでない方にも、本記事が何か少しでも参考になると嬉しいです。