犬の殺処分について調べていくうちに、とてもよい本に出会いました。
「犬を殺すのはだれか」という本です。
今回はその本を読んでみて学んだ事実を、レビューがてら書いてみたいと思います。(ネタバレ注意)
この本はAERAの記者である太田匡彦氏がペット流通(特に生体)について詳細な調査をレポートする形式のドキュメントです。
この本の多くは「日本での殺処分の多さがどうして生まれているか」という点を複数の角度から解説しています。
そのうち世間的に身近だけどあまり知られていなかったと私が思うポイントを3つ記載してみます。
※太田氏が執筆していた2012年前後では、全国で10万頭の犬が引き取られそのうち半分の5万頭が殺処分されている現状があったようです。
ペットショップ
生体を飼わせるための販売手法「抱っこさせたら勝ち」というペットショップ店員の言葉が印象深いです。
ペットショップは生体販売に注力しますが、生体を買わせるための最も近道が「お客さんにだっこさせる」という方法です。
だっこさせると一気に愛着がわき購入に近づくようです。分かるような気がしますが安易な販売方法であり、よく考えないままペットの飼育を始めるのを助長してしまうことは明白です。
ポイント
ペットショップも当然経営上、売り上げが必要で、ペット用品などに比べて生体販売は売上額も大きいです。なので生体販売に注力する必要があります。
ペットオークション
ブリーダーからペットショップに入ってくる生体は、ペットオークションを経由して入ってくる来ることが多く、生体流通全体の57%だったそうです。
貴重なデータであり、オークションがいかに重要なシステムであるかが分かります。
ペットオークションによるデメリットは以下のようにまとめられています。
・ペットショップがブリーダーと直接取引しないため、個体のデータ(どのように扱われていたか、など)があやふやになる。よって個別の注意点などを飼い主となる人に伝えられない。
・オークションでは8週齢以下の非常に幼い個体ばかりが取り扱われていた。それは小さいほど売れやすいから。しかし8週齢以下は子犬が母犬から社会を学ぶ大切な時期でその時期に親元を引き離されると問題行動を起こしやすい。
→結果的に将来捨てられやすい。
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捨て犬収集車
とある自治体では毎週〇曜日に、犬を捨てたい人たちを一か所に集めてごみ収集ならぬ「捨て犬収集」をしてたそうです。
この事実は私もまったく知らず衝撃的でした。
結果的に安易に動物を捨てる人が増えていたそうです。捨て犬収集をやめると保健所での動物の引き取り数が減ることが分かり、現在はそのような自治体はほぼなくなったようです。
ちなみに主要な自治体がどれだけ優しいかをA~Eの5段階で評価してマップにしたものが掲載されています。独断であり過去のものではありますが、独自の切り口で非常に面白かったです。
【19項目の評価ポイント】
・引き取るときに手数料を取っているか
・返還、譲渡率
・殺処分の方法
・ネットでの情報公開
・飼い主の身元確認
など
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本を読み終わっての感想
殺処分を減らすのは国民1人1人の意識を高め、犬を大切にする「文化」を作ることですね。
はい、間違いなく。
本の中にも殺処分を減らすことに奮闘する自治体職員や海外の事例などが書かれており、文化を作ること、文化を作るための法整備とメディアからの発信が必要だと思います。
特にメディアは最近では「ブリーダーの飼育崩壊」を放映することが増え私たちに「犬たちがかわいそう、悪いブリーダーがいるんだ」という印象を植え付けています。
ですが問題の本質は、犬を安易に買う人が多いからブリーダーが存在してこれたという事実です。根幹は犬を買う消費者側の意識なのです。そこを指摘していかないと文化は生まれません。
そうするとペット業界から既得権益を守るための反発も生まれるでしょうが、それが必要な流れだと思っています。
「飼いたい人で、かつ飼える人」だけに犬が飼われる世界が望ましいですね。
めぐりめぐって今の時代に再度役に立つ制度じゃないですか?。
いかがだったでしょうか。
ちなみに日本では2013年に施行された改正動物愛護管理法により少しずつ状況は改善しているところもあります。
生後8週齢未満の生体の譲渡や販売が禁止されたことや、ブリーダーなどの動物取扱業への罰則強化などです。
まだまだ動物愛護先進国のドイツなどと比べると足りない部分も多いですが、1人1人が文化を作る意識で、私自身も行動していきたいと思います。