【公開日:2021年1月14日】

うちの犬は「ささみ」が好きなんだけど、この前腎臓の数値が高くなっちゃってて・・・
今まで通り、ささみをあげて大丈夫かな?
ささみを「おやつ」や「フードへのトッピング」としてあげている方も多いかと思います。
ただ腎臓の数値が高かったり※、腎臓病になった時にあげ続けてもよいのでしょうか?
ペット栄養管理士の筆者が解説していきます。
※この記事では腎臓の数値が高いこともまとめて「腎臓病」と表記しています。
犬の腎臓病では食事管理が重要
腎臓病は完治することはなく、「進行を遅らせること」が治療の考え方になります。
治療には食事管理が超重要です。
なぜなら、栄養分が腎臓病にダイレクトに関わっているからです。
腎臓は「リン」と「タンパク質」が元でできる老廃物を処理しています。
つまりこれらの栄養素は、腎臓に負担をかけやすいということです。
なので腎臓病の時には、リンとタンパク質を減らすことが効果的です。
また、腎機能が低下すると高血圧になりやすくなります。
よって、血圧をあげる作用のあるナトリウム(塩分)も減らすほうがよいです。
まとめると、以下のようなバランスの食事を与えることが必須だということです。
腎臓病の犬におすすめの栄養バランス
- リンを少なく
- タンパク質を少なく
- ナトリウムを少なく
実際に、上記のバランスのフードを使った研究でその成果が発表されています。
一般的なフードを使っていた場合より・・・
- 生存期間が406日延長する
- 尿毒症※を発症するまでの期間が363日長くなる
(2000年のJacobらの研究)
※腎臓で処理されなかった老廃物が、体内を循環しておこる神経症状
腎臓病の時に、上記の栄養バランスがいかに重要かが分かります。
では「ささみ」は、上記の栄養バランスと比較して問題ないのでしょうか?
腎臓病の犬にささみをあげるのは危険?
結論から書くと「腎臓病の犬にささみをあげないほうがいい」です。
栄養バランスが偏っているためです。
「ささみの栄養バランス」と「腎臓病の時におすすめの栄養バランス」を比較してみます。
ささみ | 腎臓病のおすすめ | |
タンパク質 | 91% | 17.5% |
リン | 0.91% | 0.35% |
ナトリウム | 0.15% | 0.3% |
※乾物量分析値
※ささみの成分は、食品成分データベースを参照
ささみは圧倒的に「高タンパク・高リン」であることが分かります。
ささみをあげることで、以下のような状態になることが予想されます。
- 体内の老廃物(毒素)が増え、気持ち悪さが増す
- 腎臓に大きな負担がかかり、腎機能の低下が加速する
よって、犬の健康を第一に考えるのであれば、ささみはあげないほうがよいです。
もしどうしてもささみを使いたい!ということであれば、「ささみのゆで汁」を使いましょう。
フードにかけたり、飲み水に混ぜるだけでささみの風味を感じ、満足度がUPします。
タンパク質やリンの過剰摂取にもつながりにくいです。
ポイント
症状が悪化して「他のものは何も食べないけれど、ささみだけは食べる」という状況なら、ささみをあげましょう。
何も食べない、というのがいちばん良くないことだからです。
また参考までに、タンパク質やリン、ナトリウムが多い食材を一覧にまとめておきます。
タンパク質が多いもの
- 鶏肉
- 牛肉
- 豚肉
- 砂肝
- レバー
- ハム
- ソーセージ など
ざっくりいうと「肉類」。
腎臓病の時に避けるべきなのは「動物性タンパク質」です。
大豆や乳製品もタンパク質は多いですが、「植物性タンパク質」に分類されるので、ここでは割愛しています。
リンが多いもの
- ヨーグルト
- 牛乳
- チーズ
- ナッツ
- アーモンド
- 小魚(骨ごと食べる魚) など
ざっくりいうと「乳製品」「豆類」「魚類」。
肉類もリンは多めです。
ナトリウムが多いもの
- チーズ
- ハム
- ソーセージ
- 煮干し など
ざっくりいうと「人間用の加工食品」はすべて、犬にとっては高ナトリウムです。

うちの犬はささみが好きだったから残念・・・
じゃあどんなものならあげて大丈夫なの?
ではここから、「おやつやトッピングとして、腎臓病の犬にあげていいもの」を紹介してきます!
※なお「腎臓病の犬にあげていいフード」については、以下で紹介しています。 続きを見る
【どれがいい?】犬の腎臓病フード15選。食べない時の対策も解説。
腎臓病の犬にあげていいもの
腎臓病の犬にあげていいものは、大きく3つあります。
腎臓病の犬にあげていいおやつ
- 腎臓病用のおやつ
- 野菜
- 果物
ひとつずつ解説していきます。
※いずれのおやつも、あげすぎには注意しましょう。
与える量は、「あげているフード量の1割くらい」を目安にすると安心です。
腎臓病用のおやつ
いちばん安心してあげられるのは「腎臓病用に作られたおやつ」です。
腎臓病の犬のために、タンパク質・リン・ナトリウムを少なくしたおやつは、いくつも存在します。
そのなかには「療法食おやつ」や「獣医師監修のおやつ」などの、信頼性の高いものもあります。
一例としては、トリーツ(ヒルズ)というクッキータイプのおやつがあります。
腎臓用の療法食フードとセットで使え、30年以上の歴史があります。
ヒルズのトリーツ・200g入り
このトリーツ以外にも、「ジャーキータイプ」や「半生タイプ」などの腎臓用おやつもあります。気になる方は、以下の記事ですべて紹介しています。
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【犬の腎臓病のおやつ】おすすめ7選をペット栄養士が徹底比較!
続きを見る
野菜
- 「腎臓用のおやつだけだと味気ない」
- 「人間が食べられるもので、何かあげられるものないかな」
と思う方もいるかもしれません。
そんなとき、「野菜」は腎臓病の犬にも使いやすい食材です。
ほとんどの野菜は、ビタミンや食物繊維が主成分であり、タンパク質やリンは少ないからです。
画像はイメージです
以下の野菜は、 抗酸化作用のあるビタミンも豊富です。よって腎臓のダメージ軽減も期待できるので、おすすめです。
- ミニトマト
- ブロッコリー(茎は避ける)
- かぼちゃ(皮は避ける)
ブロッコリーとかぼちゃは、ゆでるなど加熱してから与えましょう。
果物
野菜と同様、果物もタンパク質やリンが少なく、使いやすい食材です。
画像はイメージです
また果物には「可溶性繊維(水溶性繊維)」が多いものもあります。
腎臓病になると便秘気味になることがありますが、可溶性繊維は便秘を改善する作用が期待できます。
以下の果物は「抗酸化作用のビタミン」が多く、かつ「可溶性繊維」も多い果物です。
- イチゴ
- リンゴ(芯は避ける)
ただし可溶性繊維は、摂りすぎると下痢を起こすこともあります。
あげすぎには注意しましょう。
「腎臓病の犬にささみは危険?」は、以上となります。最後までお読みいただき、ありがとうございました!