【公開日:2020年6月14日】

フードって変えたほうがいいの?
変えるとしたら、どんなフードがいいの
猫の膀胱炎には2種類あり、どちらの膀胱炎かによってフードの重要性が大きく変わります。
ペット栄養管理士の筆者が解説していきます。
この記事でわかること
猫の膀胱炎とは
膀胱は、一時的に尿をためておく臓器です。
そこに炎症が起きるのが「膀胱炎」です。
よって、以下のような症状があらわれます。
膀胱炎の症状
- 尿に血が混じる(血尿)
- 排尿の頻度があがる(頻尿)
- 尿の出が悪くなる
- 粗相をする
ただひとくちに膀胱炎といっても、猫の膀胱炎は、医学的には大きく2種類に分かれます。
- 細菌性膀胱炎
- 特発性(とくはつせい)膀胱炎
どちらの膀胱炎かによって、原因や対策が異なってきます。
細菌性膀胱炎
文字通り、膀胱の中に細菌が入り込んで炎症を起こしたものを、「細菌性膀胱炎」と呼びます。
細菌がいるかどうかは、尿検査などで発見されます。
細菌性膀胱炎は「原因が細菌である」ことが明確なので、治療法も分かりやすいです。
細菌性膀胱炎のポイント
- 原因:細菌
- 治療:抗生剤(細菌をやっつける)
もし検査で「細菌性膀胱炎」であることが発覚したら、獣医師に指定しされた期間、しっかりと抗生剤を与えることが最善の治療です。
それでも万が一治らない場合には、「特発性膀胱炎」や「腎不全」など、別の病気が重なっている可能性もあります。
また「耐性菌」といって、特定の抗生剤が効かない能力を持った細菌がいることもあります。
ただ猫の場合、「細菌性膀胱炎」である確率は低いです。
なぜなら猫の尿は濃いため、細菌が生きていられない環境だからです。
よって、「特発性膀胱炎」 のほうが圧倒的に多いと言われています。
特発性膀胱炎
猫の膀胱炎は、「特発性膀胱炎」である確率が高いです。
「特発性」=「原因を特定できない」という意味です。
よって、原因不明の膀胱炎といわれたりします。
細菌性膀胱炎よりも、タチが悪いと言えるかもしれません。
原因不明ってどういうこと?
細菌感染や尿路結石、腫瘍など、症状の原因を発見できないこと。
原因を検査で特定できない時に「特発性膀胱炎」という名前が付けられます。
ただ最近になって、「特発性膀胱炎には、ストレスが強く関わっている」ということが分かってきています。
具体的には、
- ストレスに弱い猫は、特発性膀胱炎になりやすい
- たくさんのストレスがかかっている猫は、特発性膀胱炎になりやすい
などです。
よって、特発性膀胱炎では、以下のポイントを押さえておく必要があります。
特発性膀胱炎のポイント
- 原因:ストレス
- 治療:ストレスを減らす
猫の膀胱炎の治療には、フードが不可欠
くり返しですが、細菌性膀胱炎であれば抗生剤の治療が最重要です。
よって、フードの重要性は高くありません。
細菌をやっつけられるフードは存在しないからです。
では、特発性膀胱炎の場合はどうでしょうか?
特発性膀胱炎の時には、ストレスを減らすことが重要です。
ストレスを減らすためにはまず、猫の習性と、個々のストレスの原因を知る必要があります。
たとえば・・・
- 猫は大きな音が苦手
→ 室内で大きな音を立てていないか?
- 猫はもともと単独行動の動物
→ 多頭飼いで、 不仲な同居猫はいないか?
- 知らない人に対する警戒心が強い
→ 不特定多数が出入りしやすい場所で飼っていないか?(客商売など)
- トイレがきれいじゃないと、排泄したがらない
→ トイレ掃除の頻度が少なくないか?
思い当たる原因があれば、それを改善することが大切です。

たしかにストレスの原因を100%当て、その環境を改善できればそれでOKです。
しかしそれは現実的ではありません。
ストレスを測る検査などないですし、猫が教えてくれることもないからです。
また環境の改善は、すぐに実施できないこともあるからです。
では何ができるかというと、「猫がストレスを感じにくくする」ことが有効です。
「リラックス状態を保つ」とも言い換えられます。
猫がストレスに鈍感になってくれれば、今の環境で感じているストレスも減りますよね?
獣医療では、以下の2つの成分が、猫の感じるストレスを減らせることが研究で分かっています。
- 加水分解ミルクプロテイン
- L-トリプトファン
そして、この2つの成分が入ったフードは、すでにいくつか開発されています。
よって特発性膀胱炎の猫には、2つのストレスケア成分が入ったフードを使うのがおススメです。
おまけ
ちなみに人間の世界でも、「ストレスを軽減する食品」が多数発売されています。
イメージとしてはこんな感じです。
猫の膀胱炎に使えるフード・おすすめ4選
現状、ストレスケア成分が入ったフード(療法食)は、4種類発売されています。
ご自宅の猫ちゃんの状況に応じて、あうものを選ぶといいでしょう。
はじめにまとめを作りました。
c/d コンフォート![]() | メタボユリナリーコンフォート![]() | ユリナリーS/O+CLT![]() | ユリナリーS/O エイジング7+CLT![]() |
|
---|---|---|---|---|
加水分解ミルクプロテイン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
L-トリプトファン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
オメガ-3脂肪酸※ | 0.72g | 1.56g | 0.72g | 0.4g |
カロリー(/100g) | 387kcal | 341kcal | 356kcal | 372kcal |
おすすめの対象 | 若い猫~高齢 | 若い猫~高齢 | 若い猫 | 高齢 |
ポイント | 実績No.1 | 肥満防止もできる | 尿量を増やせる | 尿量を増やせる |
※オメガ-3脂肪酸は、膀胱の炎症を軽減する成分。ロイヤルカナンの2製品はEPA+DHAの量。(400kcalあたり)
では、1つ1つの製品を解説していきます。
c/d コンフォート(ヒルズ)
c/dコンフォートは、ヒルズから発売されている療法食です。
ストレスケア成分がつかわれた初めてのキャットフードです。
そのため、特発性膀胱炎への治療実績がいちばん多いです。
メーカーからも、以下の内容が明示されています。
特発性膀胱炎の再発時の管理を89%までケアすることが、科学的に証明されています。(製品パッケージより)
また、4つのフードでいちばん塩分が少ないため、若い猫~高齢猫まで安心して与えることができます。(※塩分はシニア期に腎臓に負担をかけると指摘されている)
「シチュー」というグルメ缶もあり、好き嫌いが多い猫にも対応しやすいです。
よって、「特発性膀胱炎の時にまず初めに使うフード」として最適といえます。
【基本情報】
サイズ:500g , 2kg , 4kg
缶詰:あり
購入法:ネット通販、動物病院
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メタボリックス・ユリナリーコンフォート(ヒルズ)
メタボリックス・ユリナリーコンフォートは、ヒルズの療法食です。
簡単に言うと、「低カロリー版・c/dコンフォート」です。
ストレスケア成分や、塩分の低さなどの性能は、c/dコンフォートとほぼ同じです。
尿路疾患につかうフードはカロリーが高くなりがちで、太りやすい傾向があります。
ですが、メタボリックス・ユリナリーコンフォートは
- カロリーを抑える
- 健康的な代謝をサポートする
という機能をつけることで、特発性膀胱炎に加えて、ダイエットや肥満防止にも使えます。
メーカーからは、以下の研究内容が公表されています。
家庭での実用テストで愛猫の81%が60日間で減量に成功しました。(ヒルズ公式サイトより)
よって、「太り気味の猫で、特発性膀胱炎用のフードを探している」という時におススメです。
また炎症軽減成分のオメガ―3脂肪酸がいちばん多く、猫の痛みも緩和しやすいといえます。
【基本情報】
サイズ:500g , 2kg , 4kg
缶詰:なし
購入法:ネット通販、動物病院
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ユリナリーS/O+CLT(ロイヤルカナン)
ユリナリーS/O+CLTは、ロイヤルカナンの療法食です。
尿石用フードでいちばん使われていた「ユリナリーS/O(旧pHコントロール)」に、ストレスケア成分を追加しています。
特発性膀胱炎の食事療法食として加水分解ミルクタンパクを配合し、L-トリプトファンの含有量を調整しています。(ロイヤルカナン公式サイトより)
ユリナリーS/O+CLTは、塩分(ナトリウム)を増量することで尿の量を増やすことができます。
尿の量が増えると、尿の頻度も増えます。
そうすると体に尿がたまっている時間が減るため、膀胱炎だけでなく尿石症にも有利に働くと考えられています。
半面、塩分が多めなことで、シニア猫の腎臓や心臓への負担がかかるリスクがあります。(シニア猫:7歳以上を想定)
よって「若い猫で、数ケ月間くらいだけ短期につかう」といった使い方がおススメです。
ユリナリーS/O エイジング7+CLT(ロイヤルカナン)
ユリナリーS/O エイジング7+CLT(以下、エイジングCLT)は、ロイヤルカナンの療法食です。
簡単に言うと「高齢猫用・ユリナリーS/O+CLT」というコンセプトです。
くりかえしですが、ユリナリーS/O+CLTは塩分(ナトリウム)を増量して、尿の量を増やします。
ただエイジング+CLTは、「ナトリウムを減らしてカリウムを増やす」という工夫をしています。
それにより、「塩分は低いけど、尿量は増やす」ということが可能です。
なので、高齢猫で使いやすいと言えます。
下部尿路疾患の50%以上は精神的な要素が関与しているといわれています。
この製品は猫の精神の健康維持に配慮した栄養成分を配合しています。
また、腎臓の健康をサポートします。
(ロイヤルカナン公式サイトより)
とはいえ、c/dコンフォートやメタボリックス・ユリナリーコンフォートのヒルズ製品よりは塩分は10%多いです。
腎臓や心臓のケアをしっかり考えるのであれば、ヒルズ製品のほうがおススメです。
猫の膀胱炎フード」についての記事は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!